坂本さんの子どもは、小学3年です。
しのぶ君という男の子です。
ある日、小学校から授業参観のお知らせがありました。
これまでは、しのぶ君のお母さんが行っていたのですが、
その日は用事があって、どうしても行けませんでした。
そこで、坂本さんが授業参観に行くことになりました。
いよいよ、参観日がやってきました。
「しのぶは、ちゃんと手を挙げて発表できるやろうか」
坂本さんは、期待と少しの心配を抱きながら
小学校の門をくぐりました。
授業参観は、社会科の「いろんな仕事」という授業でした。
先生が子どもたち一人一人に
「お父さん、お母さんの仕事を知っていますか?」
「どんな仕事ですか?」と尋ねていました。
しのぶ君の番になりました。
坂本さんはしのぶ君に、自分の仕事について
あまり話したことがありませんでした。
何と答えるのだろうと不安に思っていると
しのぶ君は、小さな声で言いました。
「肉屋です。普通の肉屋です。」
坂本さんは「そうかぁ」とつぶやきました。
「いのちを いただく」の本より