いのちいただく 感動実話 その3

  坂本さんが家で新聞を読んでいると、
 しのぶ君が帰ってきました。
 「お父さんが仕事ばせんと、みんなが肉ばたべれんとやね」
 何で急に、そんなことを言い出すのだろう、と
 坂本さんが不思議に思って聞き返すと、
 しのぶ君は学校の帰り際、
 担任の先生に呼び止められて、
 こう言われたというのです。

 「坂本、何でお父さんの仕事ば、普通の肉屋て言うたとや?」
 「ばってん、カッコわるかもん。1回、見たことがあるばってん、
  血のいっぱいついてからカッコわるかもん」
 「坂本、おまえの父さんが仕事ばせんと、
 先生も、坂本も、校長先生も、会社の社長も、肉は食べれんとぞ。
 すごか仕事ぞ」
 しのぶ君はそこまで一気にしゃべり、
 最後に
 「お父さんの仕事はすごかとやね」
 と言いました。
 その言葉を聞いて、坂本さんは、もう少し、
  仕事を続けようかなと思いました。
                                                                                                    「いのちをいただく」の本より